結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
とにかく、いろいろとアブノーマルなこの状況のせいで暴れる心臓を抑え、私はされるがままでじっとしていた。

今どうなっているのかわからないけれど、髪を縛り、ヘアピンを留めていく社長の手つきは慣れているような気がする。


「社長……どうしてヘアアレンジなんてできるんですか」


見えるはずもない後ろの彼のほうへ横目を向けて単純な質問をすると、一呼吸置いてこんな言葉が返ってきた。


「昔、美容師になりたかったので」

「うそっ!?」

「えぇ、嘘です」

「え!?」


困惑の声ばかり上げる私に、社長はおかしそうにクスクスと笑う。

結局なんでなの? それも教えてもらえないのか。まさか、彼女にやってあげていた、だなんてオトメンみたいな理由じゃないよね……。

ますます社長の謎が深まって難しい顔をしているうちに、「はい、できあがり」という声が耳に届いた。

腰を上げ、壁にかけられたアンティーク調の鏡を覗いてびっくり。

耳の後ろでお団子にされた髪は、オシャレなシニヨン風になっている。きっちりしていないけれどラフすぎず、バレッタも天使の羽が落ちてきたように自然につけられていた。

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