結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
少し脱力して呟くリバーシブル社長を、ムッとして睨み据えた。しかし、彼はそんなことはものともしない。


「とにかく、葛城さんとどんな話をどのタイミングでするかは、お前に任せる。俺たちで、彼の壁を壊してやろう」


難しいミッションだというのに、なんだか楽しそうだ。その横顔も勇敢で、こちらまで勇気が湧いてくる。

自然と彼が執る指揮についていきたくなり、「はい!」としっかり返事をした。


店の外でそわそわしながら待つこと数分、やってきたタクシーからひとりの男性が姿を現した。

スイートチョコレートのような色のふわふわとしたマッシュヘアにスーツ姿、身長は百七十センチもないくらい小柄で、中性的な顔立ち。

大人の魅力に満ちた社長とは違うタイプだけれど、間違いなく美青年だ。

その人物こそ葛城丈さんだと、すぐにわかった。なんだか醸し出す雰囲気が、普通の人と違うもの。

片手をポケットに入れ、少し気怠げな様子でこちらにやってきた彼に、社長が笑顔で一礼し、私もそれに倣う。


「葛城さん、お忙しい中貴重なお時間をとっていただき、ありがとうございます」

「いえ」


無愛想で短く答えた葛城さんは、くしゃくしゃと頭を掻く。

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