結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
きっぱり断られちゃったけど、どうするんだろう、この状況。
ちらりと社長を見やると、彼は少し思案するように一瞬瞼を伏せたあと、動揺は露わにせず笑みを作る。
「構いませんよ。私たちも、今日の目的は葛城さんと楽しく食事をすることですから」
当然ながら大人の対応だ。でも、きっと心の中は穏やかじゃないだろう。
カチャカチャと、無機質な音だけが響く。普通ならたいしたことはない数秒の沈黙も、やけに息苦しい。
この淀んだ空気をなんとかしたくて、私は頭の中の引き出しを開けまくり、あるひとつの話題を見つけた。
「あの」
思いきって声を発すると、ふたりの整ったお顔がこちらを向く。
そのイケメンエネルギーに圧倒されそうになりつつも、笑顔で話し出す。
「私、勉強のために以前“グラース”をいただいて、とても感動したんです。あの濃厚な香りと、食べ終わったあとも長続きするカカオ感は、一度食べたら忘れられません」
グラースというのは、パティスリー・カツラギの商品であるチョコレート。
華やかなケーキやタルトが有名なため、少々存在が隠れてしまっているような気がするのだけれど、本当に素晴らしいショコラなのだ。
ちらりと社長を見やると、彼は少し思案するように一瞬瞼を伏せたあと、動揺は露わにせず笑みを作る。
「構いませんよ。私たちも、今日の目的は葛城さんと楽しく食事をすることですから」
当然ながら大人の対応だ。でも、きっと心の中は穏やかじゃないだろう。
カチャカチャと、無機質な音だけが響く。普通ならたいしたことはない数秒の沈黙も、やけに息苦しい。
この淀んだ空気をなんとかしたくて、私は頭の中の引き出しを開けまくり、あるひとつの話題を見つけた。
「あの」
思いきって声を発すると、ふたりの整ったお顔がこちらを向く。
そのイケメンエネルギーに圧倒されそうになりつつも、笑顔で話し出す。
「私、勉強のために以前“グラース”をいただいて、とても感動したんです。あの濃厚な香りと、食べ終わったあとも長続きするカカオ感は、一度食べたら忘れられません」
グラースというのは、パティスリー・カツラギの商品であるチョコレート。
華やかなケーキやタルトが有名なため、少々存在が隠れてしまっているような気がするのだけれど、本当に素晴らしいショコラなのだ。