彼と恋のレベル上げ(10/6おまけ追加)


「「「乾杯」」」
「「はじめまして、よろしく」」


隣の望亜奈さんはご機嫌な様子でグラスを傾けてる。

今日のメンバーは28~30歳のちょっと年上の人たち。

望亜奈さん曰く、ストライクゾーンな人たちってコトらしい。

私は年齢に拘りもないし、大体今日の合コン自体乗り気じゃない。

だから夕飯分だけ頂いてあとは適当なところでお先させてもらおうって魂胆。


「桃ちゃん。はい、ウーロン茶ね」

「え?何?桃華ちゃんは飲まないの?」


これもいつも聞かれること。
飲まないんじゃなくて、飲めないんです。

でも説明しても「そんなわけないよ、練習すれば飲めるようになる」って言われて飲まされる。

本当に飲めないんだって証明書ないのかな?なんて本気で思ったこともある。


「あー今日車で来ちゃってて……」

「そんなの代行に頼んじゃえば?」

「あーごめんね。この子ほんとに飲めなくて」


そこに望亜奈さんの助け舟。


「へーそうなんだ」ってつまんなそうに一瞥してその人は他の子に話しかけはじめた。


「なんかごめん。急に誘っちゃって」

「大丈夫です、夕ご飯分頂いちゃいますから」


申し訳なさそうに言う望亜奈さん。人数あわせも幹事の仕事だから、これ以上気を使わせないうちに笑顔を作って答えた。

大体五:五っていう人数設定のところで間違いだと思うんですよ、望亜奈さん。


みんながお酒飲んでそこそこ盛り上がってるところで一次会終了。

ここで望亜奈さんに声をかけてこっそり帰り支度。


「あの、それじゃあ私、ここで……」

「あ、うん、桃ちゃん気をつけてね。おつかれさま」


打ち合わせどおり。望亜奈さんが続けて挨拶してくれた。


「えー桃華ちゃん帰っちゃうのー?これからだよー?」

「あーはい、すみません。ごちそうさまでした」

「残念だなー。じゃあ、またねー」


数人はすでに移動中で、気がついた人だけがそう言ってくれた。

二次会が決まって移動中に声かけてよかった。やっぱりアッサリ解放してくれるみたい。


とはいえ、もう十時過ぎてるし。

家帰ってそっこーでお風呂入ってログインしても十一時か……。


駐車場に向かいながらこれからの予定を頭の中でシュミレーションする。

リアルの彼氏を作ることよりもゲームが優先って……


「ははは。これじゃあしばらく彼氏どころか好きな人さえも出来ないな……」
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