彼と恋のレベル上げ(10/6おまけ追加)
目の前の小さなグラスにそっと手を伸ばし「いただきます」と小声で言ってから飲み始める。
今日はお酒ってわかってるからちょっとずつ。

一口飲んで、グラスを置いて目の前の主任を見るとじっとこちらを見てる?
飲みすぎんなよっていう威嚇?


「あ、あの。ゆっくりちょっとづつ飲みますから」


言い訳に聞こえたかもしれないけど、私だって少しぐらいは飲める。


「天ヶ瀬さんがおいしいならいいんです。ただ無理はしないでください」


あ、やっぱり子ども扱い。
どうせ飲めないんだから無理すんなよってきっと遠まわしの表現。


「……はい」


でもね。
コレ本当においしいって思うんですよ?

私が素直に返事をしたからか主任も食前酒に口をつける。


「ん。やっぱりこれは甘いですね…」


主任には甘いらしい食前酒。
やっぱり私はお子様の味覚なのかな。


「あの、主任はどういうお酒が好きなんですか?」

「お酒は何でも飲みますが、家ではビールが多いですね」


お酒の中でもビールは苦手で、何であんなに苦いの飲むんだろうって思う。


「おかげで最近はこの辺が気になります」


って、主任が手でさわったのはお腹?
主任はスリムでお腹なんて全然出てなくて、気にする必要なんてないのに。

むしろお腹を気にしなきゃいけないのは、私。
ちっちゃくて童顔で幼児体系。
しかもフトモモは太いし。

こんな私が大人の女性に見られることなんてない。
主任はそのままでも十分すぎるほど素敵なんですけど。


「そんなことっ、全然っ。平気です」


ハハって思いっきり笑う主任。
あれ?また日本語おかしかった?

またやっちゃったってうな垂れてたら「一応、気をつけてはいます。歩いて職場に行くのもその一環ですから」と。


「そう、なんですね?」


私も歩いていったら少しはスリムになれるかな?
でも私の場合、足の長さの違いでかなり時間がかかる。たぶん無理。
やっぱり私はいつまでたってもちんちくりんのまま。

そんな話をしている間にお料理も並べられて、どれもおいしくて食べ進めていた。
けどふと顔を上げ主任を見ると。なんか見られてた。


「本当においしそうに食べますね」

「ほんとにおいしいですからっ」


幸せ。
おいしいお料理を主任と一緒に食べていることが。
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