彼と恋のレベル上げ(10/6おまけ追加)
GWの合間の出勤。
心なしかみんなやる気がなさそう。
六月にまた忙しくなるけど、四月の波を乗り越えた今はだいぶ落ち着いている。

私が今のオンラインゲームを始めたのは、去年の今頃。
ただの暇つぶしって思ってたのにかなりはまって、ついにはオフ会にまで行くような仲になったギルドのメンバー。
オンラインゲームをしていることはリアルの友達には話してない。
だから今度のオフ会のことも望亜奈さんにさえしていない。


「桃ちゃん、おはよ♪」

「なんか、すごいご機嫌ですね。望亜奈さん」


そしてその語尾の♪マークが怖いです。



「フフフ 明日からね。彼とバカンス♪」


なんですか、そのバカンスって。
なにじんですか、望亜奈さんは。


「よかったですね」

「あ、桃ちゃんもさ、東京だっけ?いくんだって?」


望亜奈さんにその話はしてなかった。
その話を知ってるのは潤兄だけのはず。


「潤にぃに聞いたんですか?」

「一緒に行くのって聞かれただけだけど、私じゃないよって答えたら首ひねってた相良さん」

「向こうにお友達がいるんですよ」

「なーんだ、そうなんだ。誰と行くのかって心配してたからさ」


潤兄には、友達と行くって言っちゃった気がする。
どこでどう話の辻褄を合わせようか…


「潤にぃなんて伯母さんとグルメ旅行ですよ。優雅ですよねー」

「そうなんだーいいねー」


ま、いいか。
しばらくどうせ潤兄には会わないだろうし。
会ったら会ったで、適当に。


「望亜奈さん、楽しんできてくださいね」

「うん、ありがと。お土産買ってくるね」

「気になさらず。お土産話でいいですから」

「わかったー」


あいかわらずあの彼とは続いているみたいで、望亜奈さんはパッタリ合コンに行かなくなった。
でも合コンに行ってた時よりも今のほうがずっときれいになった気がする。
バッサバサだったまつ毛は自然な栗色のつややかなまつ毛に。
盛りまくってた髪は丁寧に巻かれておろされている。

望亜奈さんの彼はイケメンというよりも落ち着いた大人な感じの人でちょっと意外だったけど。
今の望亜奈さんを見る限りではとってもお似合いだと思う。

ほんと恋って偉大。

私も少しは成長できればよかったんだけどな……
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