彼と恋のレベル上げ(10/6おまけ追加)
三十分も作業をすれば書類の束はあっという間になくなっていた。


「これで終了ですね」


ほら、二人ですればすぐ終わるのに。
全部自分で抱えるなんて主任何考えてるんだか……
私はそう思いながらも笑顔で言った。


「早く終わってよかったです」


うん、これホントのこと。
ちょっとイヤミに聞こえたりしてないよね?


「天ヶ瀬さん、お腹すきませんか?」


そう言われてみればもう9時半近く。
お腹がすいてないわけなくて。


「そういえば……すきました」

「今日のお礼に何か食べて帰りましょうか?」


え?


「こんな時間ですから、朔也の店にはいけませんが」

「あの、別に朔也さんのところじゃなくても」

「では帰る準備をしてきてください」

「あ、はい。すぐに!」


あわててデスクの上を片付けてPCの電源を落とすと私はロッカーに着替えにむかった。

待っている主任のことを思えば、化粧直しもそこそこにロッカールームを出る。


「すみません、お待たせして」

「こんな時間ですから居酒屋ぐらいしかあいてないですね」

「私、車で来てるので望亜奈さんたちとよく行くところでよかったら案内しますけど?」


望亜奈さんたちとよく行く居酒屋とは、合コン開催に使用される場所。
昼間はママたちの集会所になってるらしく、居酒屋だっていうのに駐車スペースも広い。
お店も広いし、雰囲気も悪くないからよく利用してるんだけど。


「ではそこでお願いします」


とは言ったものの。
私の車だから、運転は私で。
当然助手席に座るんだよね?主任。


今時の軽自動車はそんなに狭くないけど、やっぱり社用車と比べれば……。


「女性の運転する助手席に乗るのは不思議な感じですね」


私も今思ってたところですけど。
さらに運転しているところを見られているかと思うと緊張して……


「車で十分ぐらいのところなので」

「安全運転でお願いします」


私の運転は信用ないらしい。
これでも毎日、この車で会社にきてるんですけどね?


ひたすら緊張したまま無言で運転して10分弱。
やっぱり私はいっぺんに二つのことは出来ない性質らしい。


「つきました」


車を降りて店の入り口に向かう。
そのまま後ろについてくるであろう主任。
お店の入り口で人数を告げると奥の席に通された。
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