キミは俺のモノでしょ
こんな事態だっていうのに、雨に濡れビショビショになっていく兄のことをみて『雨も滴るいい男だ……』なんて思ってしまうわたしはバカだ。

バカだと自覚した上でなお、やっぱりそう思う。

映画のワンシーンみたいなんだもん。


「……お兄ちゃん」

「なに」

「ありがとう。遊園地の帰り、おんぶしてくれて」

「思い出したの?」

「ううん。あの日見てた子がいたらしくて、人づてに聞いたの」


信号が青に変わった。


「一番激しいときに帰ってきちゃったね」

「なにヘラヘラしてんの」

「え?」

「こんな最悪のシチュエーションで」

「ごめ……」

「ムカつく」

「ごめん……」


家に着くと絞れるくらい制服が濡れていることに気づく。


「っくし!」


寒っ……。


「先に風呂入ってきて」

「お兄ちゃんは?」

「いいから」

「……ありがとう。あ。洗濯!!」

「雨降るかもしれないのにわざわざ濡れるとこに干していかないでしょ」

「え?」

「はやく入ってこい」

「……うん」

「なに?」 

「いいの? 先に入って」


ずぶ濡れで気持ち悪いよね。

そのままだと。
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