王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です【サイト用番外編】


正体を隠し『従僕』に扮したことは正解だったと、ギルバートは思った。

リリアンより低い身分を演じたおかげで、彼女は恐縮することなくありのままの姿でギルバートに接してくれたのだから。

「ほら、ギル。今日もクラヴァットが曲がってるわ。本当にもう、世話が焼けるわね」

わざと歪に結んでおいたクラヴァットを、リリアンがお人形のような華奢な手で結び直してくれるのを心地よく思いながら、ギルバートは自分の策略の完璧さに満足を覚えていた。

このモーガン邸にやって来てから、もうすぐ一ヶ月。
ギルバートの服装や寝癖をリリアンが直してくれるのは、もはや毎朝の光景になっていた。

「いつもありがとう、リリー。助かるよ」

決して上手いとは言えないながらもリリアンが一生懸命結んでくれたクラヴァットを、大切そうに撫でる。屈託なく微笑んで礼を述べれば、リリアンは嬉しそうに口角を上げた。

「ギルってば、従僕のくせに私がいなくちゃ何もできないんだから。仕方のない子ね」

腰に手を当ててお説教する彼女の姿を見て、ギルバートは思わず笑いそうになってしまう。なんて愛らしいのだろう、と。
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