王宮メロ甘戯曲 国王陛下は独占欲の塊です【サイト用番外編】

突然居候することになったモーガン邸の一人娘・リリアンは、とてもおしゃまな女の子だった。

ギルバートが従僕、しかも年下だと勘違いすると、彼女は途端におせっかいなお姉さん風を吹かせてきた。

一人っ子で友達もいないリリアンは、ずっと妹か弟が欲しかったらしい。そんな退屈な日常に年下の従僕が現れたものだから、途端にリリアンがお姉さんぶるのも当然だろう。

人心に聡いギルバートは、頼れば頼るほどリリアンが嬉しそうに頬を染めることにすぐ気がついた。だからこうして毎日わざと失敗をしては、リリアンを喜ばせてあげているのだ。

クラヴァットを上手に結ぶことも、自分で髪を整えることも、もちろんギルバートはひとりで出来る。屋敷のメイドに習って紅茶も完璧に淹れられるようになったし、ちょっとした繕い物も簡単にできるようになった。

けれど、リリアンの前では決してそれを見せない。

なぜなら、ギルバートはおしゃまなリリアンのことが大好きだからだ。

「髪も跳ねてるわ。ほら、ここ。直してあげる」

そう言って無防備にふれてくる手が愛しい。
ギルバートが“可愛い年下の従僕”でいる限り、リリアンはなんの警戒も抱かず、こうして躊躇ない接触をしてくるのだ。こんな心地よい距離感を、つまらない自尊心で失うことはない。

「ありがとう、リリー」

そしてギルバートが笑って礼を述べれば、リリアンはそれはそれは嬉しそうに頬を染めるのだ。それがたまらなく可愛いと、ギルバートは思っている。

本当は彼女よりずっと器用で何でも出来てしまうことも、王子という身分も、年上だということも、全部どうでもよくなってしまうほどに。

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