ケーキ屋の彼
「秋斗、柑菜ちゃんのこと手伝ってあげなよ」
フルーツを持つ柑菜を見て、美鈴が秋斗の背中を押した。
「いや、全然大丈夫ですっ」
柑菜は激しく頭を横に降ると、秋斗は苦笑いをしながら困ったように美鈴を見る。
「柑菜ちゃん、秋斗一応プロなんだし、任せちゃいなよ」
「一応って、店も持ってるんだぞ」
仲が良さそうに話す2人を見て、その間には入れそうにも無いことを柑菜は感じた。
いつもの接客の笑顔じゃ無い素の秋斗は、いつもよりも人間味があってそれが柑菜をより一層惹きつける。
でも、それはあくまでも美鈴に向けられたもので、再び柑菜の方に振り向いた秋斗の顔は、いつものケーキ屋の時の秋斗だった。
「そこのメロン、切ればいいかな?」
そして、いつもの口調で話しかける秋斗。
「あ、はい、お願いします」
秋斗がいて嬉しいはずなのに、自然に笑顔が作れなくて、柑菜は持っているフルーツを凝視した。