ケーキ屋の彼

柑菜は、ふと自分の右手を見つめた。


そして、1つのことを思い出した。


「そういえば私、今弟と喧嘩してるんです。ケーキ屋に行くなって言われちゃって」


柑菜は、涼を一瞥した。


ーーきっと、私を転ばせて手を突かせてしまったことを、ひどく後悔しているはず。


「そんな時は、とりあえずこれ食べてみてください」


秋斗は、テーブルにあるマカロンを1つ柑菜に渡した。


柑菜は、それを口に含む。


甘くて優しい味がした。


「きっと、仲直りできますよ」


好きな人に言われると、今までムキになっていた心がすうっと軽くなる。


涼を見ると、目が合った。


だけど柑菜は、思わず視線を逸らしてしまう。

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