ケーキ屋の彼

すると、秋斗が柑菜の手を掴んで、涼の元へと歩き始めた。


柑菜は、握られた手をじっと見つめる。


暖かい秋斗の手の体温が、柑菜に直に伝わってくる。


ーー心臓、破裂しそう……!


涼がそれに気付いて、2人のことを見る。


なんとも言えない表情で2人の顔を見つめる涼は、思わず視線をずらして美鈴を見てしまった。


美鈴は、亜紀と相変わらず美術の話で盛り上がっていて、特にこちらを気にしている様子はない。


「私と秋斗さんは、美味しい料理でもいただいていましょうか」


「そうだね」


櫻子と秋斗は、2人を残してその場を去る。


すると、涼が先に柑菜に話しかけた。


「ごめん」


「いいよ、涼も何か考えてたんでしょ、私こそ無視したりしてごめん」


「頑張れよ……恋」


それが涼の本心なのかどうなのかは、本人にしかわからないが、柑菜はそれを素直に受け止めた。


「ありがとう」
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