ケーキ屋の彼

別荘から少し歩いたところに、看板が立っている。


その看板には矢印と散歩道という文字が記してあった。


少し先に、大人の男女2人組が散歩をしている姿が見える。


仲が良さそうな2人は、夫婦であるのだろう。


左右を木で囲まれ、その間から漏れる光が道を照らし、まるでどこか天国のような雰囲気を感じさせた。


柑菜は大きく息を吸うと、ゆっくりとそれを吐く。


自然の汚れのない空気は、いつも住んでいる都会のものよりも格段と気持ちのいいものだ。


秋斗と亜紀が一番前を歩き、その後ろを柑菜たちが歩いている。


「非日常感がすごくいいわね。絵を描きたくなるわ」


美鈴は、太陽の光を受ける木々の葉を、目を細めて見ている。


その横顔を、涼は愛おしそうに眺めている。


そしてその涼の顔を、心苦しそうに見る櫻子に、3人を複雑な思いで見ている柑菜。


この美しい自然とは裏腹に、この3人の関係はなんとも複雑で入り組んでいた。
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