地味OLはシンデレラ
和真さんは不機嫌オーラのまま。

やっぱりホテルに戻ろう。
戻ってシャワー浴びて寝よう。
明日も仕事だ。

そう思って、バッグを持って玄関に向かう。
すると突然、後ろから抱きしめられた。

「待て」
低い声に、私の身体はビクッとなる。

「冗談でこんなこと言わない。なんとも想ってない女の偽装婚約者なんか、引き受けるワケないだろうが。朝海だから引き受けた。朝海をずっと見てきて、仕事ぶりは真面目で頼りになると思った。そのうち、いろんな朝海を知って、他の誰かに取られたくないと思った」

和真さんの真っ直ぐな気持ちが、私の心に突き刺さる。
さっきから心臓の鼓動がうるさいくらい高鳴ってる。
背中から和真さんの鼓動も速くなってるのが、伝わってくる。
ドキドキしてるのは和真さんも同じ。

「俺は朝海が欲しい。いい加減覚悟決めろよ。俺と結婚を前提につき合え」

私の身体をくるりと返す。
和真さんの熱い視線が全身に伝わる。

こんな真剣な顔で、そんなこと言われて、一体誰が断れるというのだろうか。
やっぱり有無を言わせない。
私に拒否権はない。

この鬼部長はそのことをよくわかってる。
私に逃げ道など最初からなかった。

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