ハライメ〜悪喰の大蛇〜
集会を重ねた結局、佳菜子の「罪祓い」の儀式が行われることになった。
佳菜子はもう16歳ではないのでハライノギとは表現しないが、やる事は同じだ。
七日七晩儀式の間に篭もり、蛇神のために身体から罪を落とす。
今度こそ蛇神の腹を満たし、大人しく社に帰ってもらうためにーーー。
けれど、七日目の晩が過ぎても、父たちは佳菜子を離れの外に出そうとはしなかった。
佳菜子から「蛇が離れた様子がなかった」からだ。
『氏子たちを納得させなければいけないんだ、と雅史さんは言った。
佳菜子があのままでは、皆はいつまでも蛇神が空腹だと言って騒ぎ続ける。
佳菜子が治らない以上、治ったということにして閉じ込めておくしかないんだ、と……。
雅史さん自身は、『蛇憑き』なんてものは信じていない。
けれど氏子総代の矢鳥家当主という立場上、こうする以外に道はないのだという。
彼の言うことは、理解はできる。
だけど佳菜子ちゃんのことを思えば、こんなことが許されていいわけがない』
母は佳菜子を離れから出して適切な治療を受けさせるようにと父に強く訴えた。
けれど祖母から「これ以上うるさく言うようなら、あざみを置いて出ていけ」と脅され、結局佳菜子を助けるのを諦めるしかなかった。