限りなくリアルな俺様参上!
駅前のロータリーに停車してあった彼の車に乗り込んだ。

「最近、ネットが密になりすぎる気がしないか?」

「そうですね。私もカフェ・リサーチのバイトを友達からネットで依頼されたんです。」

「コラムとかエッセイを書くこと?」

「レポーターみたいなものです。」

「この辺?」

「はい、あのグレーっぽい建て物です。」

「1本裏へ入れる?」

「はい。」

「停めても平気?」

「あの柵際でしたら大丈夫ですけど。」

「じゃ、ここに停めよう。君んちでお茶を飲ませてもらいたい。送った礼として。」

「えっ?」

「ダメかな?」

「いえ、そんなことはありませんけど。」

「じゃ、頼むよ。お茶を飲んでサッパリしたい。」

私はそんな彼をちょっと強引だと思った。

「いいね、この色とこの香り。どこのお茶?」

「さあ、もらいものです。」

「君は変わってるな。」

「そうですか?」

「1日中あそこに座って仕事するわけか。」

「そうです。」

「PCが恋人か。」

「そうだったらいいです。」

「なぜ?」

「もう恋はしたくありませんので。」

「へぇ、面白いことを聞いたな。君が恋した男はどんなヤツだった?知りたい。」

「そんなこと、私が言うわけないです。」

「ふ~ん、怒ったか。」

「別に怒ってません。」

「あれはペット?」PCのそばに置いてあるガラスケースを指差した。

「はい。」

「トカゲ?」

「イグアナです。」

「どっちも同じようなもんだ。変な趣味だな。普通の女はあんなものを飼ったりしない。」

「私の勝手ですから。」

「しっぽを伸ばしてベルトにできるな。」

「なんてことを言うの?信じられない。」

「あれ、触れるんだろ?」

「あなたには触らせないわ。」

「お茶のお代わりを頼むよ。」

「・・・・・」早く帰ってくれないかしら。

「今何を思ったか当ててみようか?」

「何も思ってません。」

「いつになったら帰ってくれるのか、そう思っただろ?」

「いいえ。」私は一応否定した。

「いいよ。正直に言っても。」

「お帰りにならなくてもよろしいんですか?」

「あっはっはっ、言うと思ったよ。俺は帰らない。」

「えっ?」私が眉間にシワを寄せて怪訝な顔をしたのを見てまた笑った。

「私はあなたのいじめの対象なんですか?」

「あっはっはっ!」

「そうとしか思えないわ。」

「くっくっ、あー笑った。なんておかしいんだ、君って。」

「失礼ね。お茶を飲んだら帰ってくださいね。私、仕事がありますので。」

「美久、ちょっと。」ぐいと腕を引っ張られ

あごをつかまれて動けないほどの威圧感が私を覆った。

「じっとして。」

「ぃやっ!」彼は舌でペロリと私の唇を舐めた。

「う~ん、まだシューの味がする。」

「何するの!」

「何もしやしない。怖がらなくてもいい。俺に抱いてほしい?」

「イヤです!」

「俺は同意が得られなければ得るまで粘るタイプだ。」

「嫌です!」

「美久?君は俺を見て何も感じないのか?」

「感じないです。」

「変な女だ。普通なら。」

「普通ならどうなんですか?」彼は私に顔を近づけた。

私はパッチリと目を開けたまま彼の青い目を睨んだ。

「睨むなったら。そんなに大きな目で見られたら吸い込まれそうになる。唇が可愛い。俺に吸われたがっているようだ。」

そう言うなりキスしてきた。

「ふんぐぅ、ぅう。」なんて強くするの?

「んぐ。」彼の腕が背中を回った。

私は身体を引き寄せられて彼とピッタリ密着した。

「んん。」苦しい。

これ以上抵抗できない。

「んーっ、はぁ、はぁ。」やっと離れた。

「美久、なぜ逆らう?」

この人、頭がおかしいんじゃないのかしら。

誰もがあなたに夢中になるわけないのに。

思うまま言った方がいいかもしれないわ。

今まで誰にもそんな風に言われたことがないのかも。

「透樹さん、はっきり言いますけど、誰もがあなたに夢中になるわけないでしょ!」

言ってやったわ。

そうよ、こういう人にははっきり言った方が身のためなのよ。

「ぷっ、あっはっはっ、美久、君は俺を知らないからそう言えるんだ。いいだろう、君を夢中にさせてみる。そうだな、期限は1ヶ月だ。XX月XX日にまたあの店で会おう。それまで君には手を出さない。約束だ。いいか、美久、今日のキスを忘れるなよ。俺の携帯を教えておくから。」

彼はテーブルに置いてある私の携帯へ勝手に登録して言った。

「美久、1ヵ月後君は俺のものになる。じゃ、帰るよ。」

「透樹さん、勝手に決めないで!」私は彼の背に叫んだ。

バタンッとドアが閉まる音がした。

「もぉ、なんてヤツ!」

でも彼の唇が熱かった。

舌も。

私を離さなかった。

抱き寄せて私を包んだ腕が力強くて負けそうになった。

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