【完】V.I.P〜今宵、貴方だけの私になる〜

「ぶっ…あのケインが?そんなことを?流石に我社No.1と名が浮かぶ程の生真面目なやつだな…。で?お前はその条件に沿いたいと?」

「そうよ?だって、愛してるんだもの。それに、私は彼の子供を宿してる…だから、お願いよ…要人。必ず成功させてみせるわ」

なんだかんだと、俺はこの存在にはある意味弱い。
だから、くしゃり、と前髪を崩してから笑みを浮かべる。


「あははっ。分かった、今回は俺が折れるよ。あぁ本当だ…あぁ、愛してるよ、マスミ…」


まさか、その最後の会話だけを切り取って、彼女に聞かれていたなんて知らずにそう告げてから、今夜逢う約束を取り付けて電話を切った。


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