【完】V.I.P〜今宵、貴方だけの私になる〜
あぁ、それよりも、問題はこっちの方が重大。
彼と私は誕生月もぴったりの丁度まるっと7歳差。
そんな彼を、初対面からファーストネームで呼べるほど、私の肝は座っていない。
「…では、要人社長…」
「……へぇ?」
少し考えた末に私が出した答えに、彼は非常に感慨深く私を見つめてきた。
「何か?」
「そういう言われ方、初めてだ」
「……………」
今までの秘書…というか、この人の周りにいた女性達は、どれだけ彼の鼻を高く築かせたのか。
呆れて物も言えなかった。
「ファーストネームで呼べる程の仲ではないでしょう?なので、私の事もけしてファーストネームで呼ばないでくださいね?」
そう、軽く牽制を掛ける。
彼はそんな私を長い足を組んだまま、ジッと見つめていたっけ。
でも、そんな彼のことも視界の隅に追いやって、私は自分の仕事に打ち込んだ。
とりあえず…男なんかで苦労するのはもう沢山だ。
そう、『あんな』想いをするのはもう、真っ平だった。
無い物ねだりはしたくないし、期待も淡い希望も持ちたくない。
今だって少しだけ思い出すだけでも、心がヒリヒリと小さく疼く。
なんだって、こんなに引きずらなきゃならないのか…。
まるで私ばかりが未練を持っているようで、それがとても癪に触っていた。