【完】V.I.P〜今宵、貴方だけの私になる〜


『忍が好きだよ』
『忍が、1番だよ…』
『忍。忍…』



それの言葉が、その声が、少しずつ少しずつ重くなる。
一度疑問をもったら、駄目なんだ。


ずるずると、闇が立ち込める。
あれもこれもと不安が押し寄せる。
そして…落胆の繰り返し。

浮遊していた思いが急激に墜落していく様を、誰が止めて癒やしてくれるといいの?
そんな想いに潰され苛まれ、私は…沈んだ。


「愛されたいのに愛されない」ことは、凄いフラストレーションが溜まる。


ああ、そう言えば、彼は最後まで私に『愛してる』とは言わなかったな…。

そんな事を思い出して、今更か、と小さく苦笑した。

本当は、彼の愛が何か知りたかった…。
追い掛けて縋って、慰めのキスでもいいから欲しかった。

強がって本音を隠して、余計に惨めになった私には…偽りと紙一重の優しささえ捨てられず……傾いてそのまま闇の中へ溶けていく。



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