君を愛していいのは俺だけ

「桃子ちゃんは、好きな人いるでしょ?」
「えっ!? い、いないよ」

 滝澤さんに話を振られて、いつになく慌てている桃子ちゃんがかわいいと思った。
 彼は、まさか自分のことが好きだなんて、思っていないんだろうな。
 やっぱり好きな人を前にしたら緊張するし、好きな人が誰かなんて話題にされても、なにも言えなくなっちゃうよね……。

 陽太くんは今頃なにをしてるのかなぁ。そういえば、本当に彼女がいないのかも聞けてないし……。
 桃子ちゃんたちが楽しく話しているのを聞きながら、頭の中では陽太くんのことを考えてしまった。


「もう二十二時か、そろそろ帰ろうかな」

 滝澤さんが腕時計を見てから、残りの缶ビールを飲み干して立ち上がった。


「桃子ちゃんも帰ろう」
「えー。じゃあ、滝澤さんの家で終電まで飲む」
「無理に決まってるでしょ。ほら、立って」

 ふたりが揃って帰っていくと、途端に部屋が静まり返って寂しくなった。


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