君を愛していいのは俺だけ

 定時で退社し、どこにも寄らずに帰宅した。
 美歩に連絡先を交換できたことと、好きな人がいると言われたのを報告しておいたけれど、返事がないということは、きっとまだ仕事中なのだろう。


 陽太くんとの一往復のやりとりを、何度も眺めてしまう。
 内容はなんてことないのに、こうして繋がりを持てたことが奇跡のようだ。

 でも、彼の好きな人は誰なんだろう。歓迎会では、好きな人はいないって言ってたのに。
 片想いならしてたって、過去になってるのは、どうしてなんだろう。

 今になって、彼があの日言っていたことが気になってしまった。


 二十一時を回ったころ、美歩から【よかったね。好きな人が誰なのか気になるところだけど、連絡が取りあえるなら、一歩前進だよ】と返事が届いた。

 その通りだと思った。
 七年も足踏みしていたけど、再会してから動き出した時間に色が加わったようだ。


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