君を愛していいのは俺だけ

 十七時を過ぎてから、佐久間さんに内線で連絡を入れ、社長室フロアへやってきた。
 どんなに業務で訪れることが多くなっても、なかなか入室権限は与えてもらえるものではないらしく、セキュリティーの前で待っていてくれた佐久間さんに続いて入った。


「今、ちょうど社長がコスメを見ているので、執務室へどうぞ」
「……はい、ありがとうございます」

 社長室にある空席か簡易打ち合わせブースで見れるんだと思っていたから、少しドキドキしてきた。
 陽太くんがいる執務室のドアをノックすると、彼が内側から開けて迎えてくれた。


「お疲れ様です」
「お疲れ様。どうぞ、入って」
「いえ、お邪魔でしたら日を改めます」
「一緒に見てほしいんだ。だから佐久間に連絡を入れてもらったんだよ。さぁ、入って」

 入社してからまだ数か月しか経っていないのに、事あるごとに執務室へ入っては周防会の先輩方の視線が気になる。
 だから、日を改めたかったのに、彼はそれを許してくれなかった。


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