君を愛していいのは俺だけ
「二人きりだと気を使うだろうから、佐久間も誘ってあるよ」
「あ……そうなんですね」
てっきりデートだと思って、一瞬でも浮かれた気持ちが少ししゅんと萎む。
佐久間さんは私の気持ちも知るはずがないのに、断ってほしかったなぁ……なんて。
だけど、彼が一緒じゃないと、私とは食事にも行ってくれないのかもしれないし……でも、長崎では部屋に来てくれたし……。
「無理にとは言わないけど、どうかな?」
考えている私に、彼が微笑みと共に問いかける。
「ぜひ、ご一緒させてください」
「よかった。じゃあ、佐久間には俺から言っておくから。滝澤さんたちにも言わないようにね」
「もちろんです」
社長室を後にして、自席に戻る。
ふたりきりじゃなくても、彼と食事に行けるようになっただけ大きな進歩だ。
本当は、今すぐ大声で叫びたいくらい嬉しいけれど、さすがに会社でそれができるはずはないから、いつもと変わらぬ素振りで過ごした。