君を愛していいのは俺だけ

「これ、サンプル品でもらったし、仁香にあげるよ。もう使っちゃったしね」
「いいんですか?」
「もちろん」

 彼がかわいいと言ってくれた口紅は、ブルーベースの私の肌色にぴったりで。
 まだ日本未発売の商品をもらえて、嬉しくなった。


「それと、今週末空いてる? 金曜の仕事の後」
「はい」
「食事に行かない?」
「えっ!?」

 予想もしない展開に、驚きの声が少し大きくなってしまった。
 彼は苦笑いしながら人差し指を唇の前に立て、「シーッ」っと言って笑ってくれた。


 陽太くんに誘ってもらえるなんて……。
 長年の片想いが少しずつ報われているようで、今にも泣いてしまいそうだ。


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