君を愛していいのは俺だけ
前菜の盛り合わせと和牛のタルタルがテーブルに並んだ。
陽太くんと向かい合って、ふたりきりで食事をする日が来るなんて、本当に夢でも見ているようだ。
だけど、口に広がる山葵ソースの香りも、「美味しい」と向かい側から微笑んでくる彼も、もちろん本物で……。
「嫌だったよな。佐久間がいるから、誘いに乗ってくれたのに」
「そんなことないです」
「ごめん。でも、どうしても話したかったんだよ」
陽太くんが私と過ごしたいと思ってくれるだけで十分幸せだ。
再会できたことも奇跡を感じていたのに、このところ彼を近くに感じられていて、今夜はこんな時間を用意されていて……。
私がどれだけ彼を好いているか、きっと知らないんだろうな。
仕事の話をするのに、たまには食事もしようと気を使ってくれているだけで……。