君を愛していいのは俺だけ

「滝澤さんとは、よく飲みに出るの?」
「彼とっていうより、同期で飲みに出る方が多いですよ」
「ってことは、彼とふたりで飲んだこともあるの?」
「はい、誘われたので。それから、桃子ちゃん……真田さんも一緒に私の部屋で飲んだことも一度だけありました」

 あの日は、桃子ちゃんが滝澤さんに恋をしてるって聞かされたんだったなぁ。
 今日あたり、元木さんも長居はしないだろうし、ふたりで楽しく過ごせてるといいけど。


「へぇ……仁香の部屋にね」
「どうして、そんなことを?」
「気になったんだよ。どれくらい社や部内に馴染んでるかとか、周りの環境を気に入ってくれてるかとか」

 テンダーロインのステーキをひと口大に切り分け、口に運ぶ彼を見つめる。

 私のことを気にかけてくれていたんだとしても、それは社長として?
 こうしてふたりきりで過ごす時間を作ってくれたのも、仕事の一貫なの?


 彼の気持ちが見えそうで見えない。
 だけど、まだ知る勇気もなくて。

 私もひと口サイズに切り分けたステーキを頬張ったけれど、片想いの切なさばかりに気を取られてしまう。


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