君を愛していいのは俺だけ
「……いきなり呼ぶなよ」
伏し目がちにしていた視線を彼に合わせると、私から目を逸らして街並みを眺めている横顔があった。
だけど、その表情はどこか照れているようにも見える。
彼の頬がほんのり赤く見えるのは、お酒のせいかな? それとも寒いから?
付き合っていた頃の思い出にはない、初めて見る彼の表情に胸の奥がきゅんと鳴る。
「まだ仁香と話したいんだけど……帰る?」
すかさずかぶりを振って、彼の誘いに乗った。
こんなチャンスは二度とないかもしれない。彼から誘ってくれた夜がまだ続くなら、終わりまで一緒にいたくなる。
もう少しだけでも彼と話したら、今の彼をもっと知れるかな。
七年前とは違う私たちの距離がどれくらいあるのか、計れたらいいのに。