君を愛していいのは俺だけ
約二時間、食事をして店を出た。
さらに寒くなった街に、イルミネーションが煌めいてとても綺麗だ。
「まだにぎやかですね」
「金曜だからなぁ。渋谷の方に出たら、もっとだろうね」
他愛ない話をして、彼の様子を窺う。
時刻は二十一時半前。終電までは時間があるし、遅くなったとしても、千駄ヶ谷の自宅まではタクシーで帰れる距離。
――もう少しでいいから、まだ一緒にいたいな……。
待ち合わせた表参道駅の前で、彼が足を止めた。
「どうしよっか。仁香、帰る?」
「……陽太くんは?」
思いきって、彼を名前で呼んでみる。
今しかないと感じたし、この機会を逃したら、彼との距離が一向に変わらない気がして。