君を愛していいのは俺だけ
「適当に店に入ってもいいんだけど」
「そうですね……でも、もうお腹いっぱいです」
陽太くんが連れていってくれたさっきの店は、食事もお酒もデザートもすべて美味しかった。
それに雰囲気も抜群に洗練されていて、デートじゃなかったら行かないようなお店で……。
「あのっ……」
青山通りにかかる歩道橋にさしかかり、階段を上ろうとしていた彼が振り返った。
「どうした?」
「今日って……デート、ですか?」
もう一回、確認したくなる。
デートみたいなもの、ではなくて。
デートをしてるって彼が言ってくれたら、背中を押してもらえると思う。
今の彼も、空白の七年にいた彼も知る勇気が持てる気がする。