君を愛していいのは俺だけ

「誰か来たら、どうするんですか」
「来ないよ。俺たちしかいないから大丈夫」
「でも、やっぱり」

 ドキドキする鼓動の震えが彼に伝わってしまったらと思うと恥ずかしくて、彼の胸元を軽く押し返した。


「離れていいなんて、いつ言った?」

 今度は力強く抱きしめられ、呼吸ごと潰されそうだ。
 だけど、苦しいはずなのにたまらなく嬉しくて……一層頬が染まっていくのを抑えられなくなる。


「仁香を構えなかったのは、年明けで忙しかったのもあるけど、そうでもしないとバレそうだったから。ふたり揃ってお互いを意識してたら、あっさり噂の的になるだろ?」
「……陽太くんが、抱きしめたり突き放したりするからでしょ」

 変わらずに接してくれていたら、ちゃんと公私のけじめをつけられたはずなのに。


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