君を愛していいのは俺だけ

 勝手に瞳が潤み、彼の顔が揺れて見える。
 火照った頬がそっと包まれ、親指で唇がなぞられたら、好きと言わなくても心を暴かれた気分になった。


「ごめんな。仁香を堕としたくて、年甲斐もなく駆け引きしたんだよ」

 ちょっと意地悪だけど、優しい彼も。
 仕事に厳しくて、多忙を極めている彼も。

 いつだって私を想ってくれていた。
 さみしかったけれど、彼は私に知ってもらおうとしてくれていたんだろうな。


「これから俺に愛される覚悟はできてるか?」

 小さく頷いたら、彼はとても優しく微笑んでからゆっくりと私を抱きしめ直した。


「好きだよ」

 耳元で囁かれ、僅かに肩が浮いてしまう。
 私の反応なんて気にせず、彼はそっと耳にキスを落とした。


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