君を愛していいのは俺だけ
「……参ったな」
「ごめんなさい!」
「いいよ、謝ったところでなにか変わるもんでもないし」
そうは言うけど、陽太くんの表情はいつになく厳しい。
額に手を当てて立ち尽くしている彼は、私を一瞥してため息をついた。
「佐久間だけだったのが、せめてもの救いだな」
「……本当にごめんなさい」
冷たく聞こえる彼の声色に、申し訳ない気持ちが押しつぶされそうだ。
「あとはなんとかするから、先に帰って」
「でも」
「仁香がどうにかできることじゃない。俺が社内恋愛に踏み切ったんだから任せて」
優しい言葉をかけてくれたけれど、その表情は伴っていない。
隠し通してきた関係が知られてしまうのを、彼が絶対に望んでいないって分かるからこそ、それ以上なにも言えなくなった。