君を愛していいのは俺だけ
自宅に着いても、彼は無言のまま。
いつもなら自室に入ってからリビングに来るのに、今夜はスーツ姿のままでソファに座った。
「仁香、話そう」
「……うん」
胸が痛い。
別れ話をするのかな。
勝手に部屋を出て、面倒をかけるような女とはいられないって、三行半を突きつけられるかもしれない。
佐久間さんにも知られてしまったからには、公私混同できないだろう。
社長として、そのあたりの線引きをきっちりしなくては示しがつかないはずだ。
今になって思い出す。
陽太くんが、私の好きな彼だと知ったあの頃……あくまでも社長と社員だというけじめの釘を刺されていたのに。
「っ……ごめんなさい」
いてもたってもいられず、彼の隣に腰を下ろす前に、泣きながら謝った。