君を愛していいのは俺だけ
他人に話せば、勝手に別れていなくなって、偶然再会したからってこんなことまで許されるのかと咎められるだろう。
だけど、なにをどう言われようと譲れないものがある。
それは誰だって同じ。
俺にとってのそれが、仁香の存在だった。
彼女の父親に交際が知られてしまった時、家庭教師の授業ではない日に呼びだされて、問い詰められた。
『うちの娘を一生守り抜き、必ず幸せにするそれなりの覚悟ができているんですか?』と。
当時の俺も、仁香を愛していたことに違いはない。
だけど、“愛”というものがなんなのか、“好き”という感情を持ち寄ることがどうして許されないのか、まだまだ若かった俺は疑問を持ったままだった。
そんな俺の心中を察した彼女の父親は、強制的に別れさせる道を選んだ。
再会してから、仁香とあの頃の話をしたことがあった。
彼女は父親を悪く言ったけれど、本当に俺がダメな男だっただけ。