君を愛していいのは俺だけ
独占欲で彼女を縛ったり、妬いて困らせたりするのが愛情ではないのは分かっている。
“愛”とはなにか、それはきっと答えにならないものだろう。
十人十色、それぞれの形があるはずだし、恋人同士の相性の良さというのは、その“愛の形”が合うかどうか、受け入れられるかどうか……自分の愛情に胸を張って、相手を包み込むだけの度量があるか。
そういうことなのかもしれないと、この歳になって考えるようになった。
でも、まだ正解はわからないし、自分なりの愛し方が仁香にとってどうなのか、常々気にかけてはいる。
区切りのいいところまで仕事をして、帰宅したのは二十時頃。
玄関を開けると、仁香がリビングから出てきて出迎えてくれた。
「ただいま」
「おかえりなさい」
靴を脱ぐ間も惜しんで、彼女を抱きしめる。
あぁ、本当に幸せだ。
離れている間も夢にまで見るほど愛しかった彼女が、こうして再び腕の中にいるなんて。
――もし、これが本当に夢だったら、切なすぎるな。
桜が舞い散って、ひらりと手のひらから滑り落ちていくような、もの悲しさに浸るだろう。