君を愛していいのは俺だけ

 唇が離れ、火照った私の頬にもうひとつキスが落とされて。


「まだ、言わないで」
「……今じゃないと、言えない気がしたのに」
「後にして」
「どうして?」

 今にも溢れそうな気持ちを伝えたくて疼く胸の奥が苦しい。

 私がなにを言おうとしていたのか、陽太くんは察した様子だけど、それでもやっぱり伝えたいな。



「仁香が困るだけだよ」
「だから、どうして?」
「……ここで、俺が襲ってもいいなら言いな」

 ちょっと意地悪な微笑みを浮かべた彼が、艶っぽく私を見つめてくる。
 息が混ざる距離でそんなことを言われると思わなかった私は、すかさず言葉をのんで彼に背を向けた。


「言ってもいいんだよ?」
「言わない」

 隙間なく抱きしめてくる陽太くんの素肌が触れると、彼が作り出すムードに飲まれてしまいそうだ。


< 422 / 431 >

この作品をシェア

pagetop