君を愛していいのは俺だけ
《side 陽太》
湯温と大差ない熱を彼女から感じる。
かけ流しの温泉に浸かりながら、熱海の夜景と星空に目を凝らし、どうにかして欲を抑えようと必死だ。
それなのに、好きだとか嬉しいだとか、そういう類のことを仁香が言いかけたからキスをした。
今ここで襲ってもいいなら、話は別だけど。
そんなことしたくないし、もっと大切に愛したいし……。
悶々としながらも露天風呂を出て、来た道を戻る。
一緒に選んだ色浴衣を着た仁香の手を取り、一歩先を行くのはとても見つめていられる気がしないから。
セミロングをひとつに纏めたうなじも、はらりと落ちた細い髪束も、なにもかもが俺の想像の上をいく色気で、一昨日から当てられっぱなしだ。
仁香は、いつものごとく気付いていないようだけど。