君を愛していいのは俺だけ

 年明けのカウントダウン二十分前に、ふと目を覚ました彼女を襲う気にはなれなくて、なんとも穏やかに新年を迎えた。


「陽太くん、明けましておめでとう」
「おめでとう。今年からもどうぞよろしく」

 なんて、紳士ぶってみたものの、内心は煩悩にまみれている自分が格好悪かった。


「そういえば、この宿を建てたのは大学の先輩の会社なんだよ」
「そうなの!?」
「俺たちの結婚式にも来てくれるんじゃないかな。御門建設って知ってるだろ?」

 御門建設は国内外の建造物を手掛けている大企業。
 そして、御門先輩はクールで仕事に厳しく、心の温かい男性だ。


「もちろん! あのスーパーゼネコンの社員さんとも繋がりがあるなんて知らなかったなぁ」
「社員っていうか、御門の副社長なんだけどね」
「えっ!? 副社長さん!?」

 そう簡単には出会うこともない人だと分かっているから、仁香はとても驚いていた。


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