君を愛していいのは俺だけ

「それと、俺たちが着てる浴衣は、八神(やがみ)ブランド」
「あ、本当だ! 今まで行った旅館で着たどの浴衣よりもずっと質がいいんだもん」

 裾に刺繍された【Yagami】の文字を見つけた彼女は、生地をよく見てから着心地の良さに納得しているようだ。

 だけど、俺はメラメラと嫉妬に火が点いてしまって。


 ……今まで行った旅館?

 この七年の間に、誰と行ったの?


「陽太くん!?」
「誰と行ったの?」


 彼女を布団に押し倒して馬乗りになった。


「なんのこと?」
「温泉」

 彼女は少しだけ疑問符を浮かべたような表情をしてから、ふっと微笑んできて。


「家族と女友達だよ。家族以外の男子禁制旅行しかしてないから」
「……本当に?」

 仁香が頷いてくれてホッとしたら、煩悩まで消えてしまった。


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