君を愛していいのは俺だけ
「――周防様、お食事の準備に参りました」
浴衣の帯に手を掛けたところで、仲居さんが部屋の戸をノックして声をかけてきた。
「……今夜は寝かさないからね」
助かったとでも言いたげな仁香に、俺はそう言い残してベッドから下り、仲居さんの食事の支度を眺めた。
「温泉はいかがでしたか?」
「とても気持ちよかったですよ。景色も本当に綺麗で」
「ご満足いただけたようで安心いたしました」
仲居さんの問いかけに答えつつも、俺が見ていたのは景色二割、仁香八割だったなんて言えないなと口を噤む。
俺の悪戯のせいで、頬に熱色を残した彼女が奥のベッドルームから出てきて、伏し目がちに対面に座った。
豪華な食事が並ぶ座卓の向こうにいる仁香を、今すぐに食べてしまいたいけれど、好きなものは最後のお楽しみにする主義だったと思いだし、注がれたビールで乾杯をした。