君を愛していいのは俺だけ

《side 仁香》


 今夜は寝かさない、なんて言われたら、すぐに火照ってしまうって分かってるはずなのに。
 確信犯の彼のせいで熱くなった頬を、少し冷たくなった手のひらで落ち着かせてから、仲居さんがやってきた居間へ戻った。


 温泉のことを話している陽太くんを横目に、正面に腰を下ろす。


「乾杯」

 信楽焼のタンブラーを合わせて、冷えたビールで緊張をごまかした。


「奥様、ご体調があまりよろしくないのでしたら、ご無理なさらないでください」
「いえ、大丈夫です」
「湯あたりでしたら、落ち着いてからお酒を楽しんでくださいね。まだ少しお顔が赤いようですので」
「お気遣いありがとうございます」

 仲居さんに頬の熱を見破られて上手く交わしている私を、陽太くんは向かいからからかうような目線で見つめている。


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