君を愛していいのは俺だけ

 それに、またしても慣れない“奥様呼び”に不意をつかれ、ドキドキしてしまった。


 仲居さんが部屋を出たら、当たり前だけどふたりきり。
 浴衣姿の彼が目の前にいると、食事が並ぶ座卓に視線を落とすしかなくて。


「仁香、怒ってる?」
「うぅん、怒ってないよ。どうして?」
「さっきあんな悪戯したから」
「っ……そ、それは、ちょっと文句もあるけど」

 仲居さんがいつ来るかは分からなかったとしても、そろそろ食事の時間だと予想はできたはず。
 もし、私が漏らしてしまった甘い声を聞かれていたら……頬が熱くなっていたのも、遅れて寝室から顔を出したのも、変に思われたかもしれなくて。


「仁香は、俺に愛されたくないの?」
「……そういうことじゃなくて」
「ん? なに?」

 彼に聞こえないように呟いたら、案の定聞き返されてしまった。


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