君を愛していいのは俺だけ

 動揺と緊張で、顔が真っ赤になっているのが分かる。
 座り直した時に触れてしまった彼の手が、思いのほか近くに置かれていて、その距離を目にするだけで脈が速くなってきた。

 私は周防社長の問いかけに頷いて答えると、滝澤さんと目が合ってしまった。

 なんたるタイミングの悪さだろう。
 社長が耳元で呟いた瞬間も見られたかもしれない。それで、こんな真っ赤な顔をしてたら、昼間のことが否定できなくなりそうだ。

 それに、桃子ちゃんが社長に絡んでいるのは、彼女が恋をしているからだろう。


 もう飲まずしてやってられるかと、飲み慣れない日本酒を喉に通す。

 どうして周防社長が陽太くんにそっくりなの?
 陽太くんだとしたら、なんで私に気づいてくれないの?

 秋吉さん、なんかじゃなくて、仁香って呼んでほしいのに――。


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