君を愛していいのは俺だけ

「お先に」
「滝澤さん、今日は早いですね」
「これから、客先と飲むことになっちゃって……と言っても、大学の同期が相手なんだけどね」

 歓迎会を終えてから、滝澤さんとも砕けて話せるようになった。
 同期とはいえ、やっぱり年上だと気を使っていたなぁと、短い期間ではあるけれど実感する。


「気を付けて行ってきてくださいね」
「ありがとう。それじゃ、また明日」
「お疲れ様でした」


 十八時になって、仕事を滞りなく終えた。
 帰ってもいいのに、帰れない。

 周防社長からの返信を待ってしまう。

 あと五分だけ待っていたら、とか。
 もう一回メールを確認していたら、とか。

 明日でも明後日でもいいのに、強く決意したからか、どうしても今日話したくて。


< 53 / 431 >

この作品をシェア

pagetop