君を愛していいのは俺だけ
「仕事とは関係のないことなんですが、いいですか?」
「うん、いいよ。なにか相談事?」
「いえ、そういうことでもないのですが……」
気づかれないように呼吸を整え、声が震えないように意識して、改めて彼の瞳をまっすぐ見つめる。
「人違いだったらすみません。社長は、私と以前会ったことがありますか? お見合いの場ではなく、もっと前に」
全身の脈が大音量で鳴る。
指先も首筋も、耳の奥までドキドキと鳴っているのが聞こえてきて、胸に秘めてきた想いが、今にも決壊してしまいそうだ。
彼は、そんな私のまなざしから目を逸らすことなく、優しく微笑んでいる。
「よかった。覚えててくれたんだね」
付き合っていた頃と変わらない笑顔で、私の問いかけに肯定を返してくれた。