君を愛していいのは俺だけ
「ただ社長が私の知っている人かどうか確かめたかったんです」
「本当にそれだけ? 今の俺を知りたいと思ったりしないの?」
「…………」
そりゃ、知りたいけれど。
陽太くんってこんな人だったかな。
ちょっと攻撃的というか、人の心を勝手に言葉にして暴いてくるというか。
間違ってはいないけれど、言い当てられて気分がいいものではないし……察してほしいところもあったりして。
「あくまでも社長と社員だっていうことは忘れないで。俺との過去も、誰にも話さないように」
「わ、分かってます!」
「それならいい」
にっこりと嫌みなほど素敵な笑顔を浮かべた彼は、ゆっくりと立ち上がってドアのほうへと向かう。
「今日のところは、もう帰りなさい」
私は促されるままに腰を上げ、一礼して社長室を出た。