君を愛していいのは俺だけ

 翌日、偶然社内ですれ違った時、彼は「秋吉さん、お疲れ様」と声をかけてくれた。
 嬉しかったけれど、周防会の視線が気になって、笑みも浮かべず淡々と「お疲れ様です」と返すに留めた。

 働いている彼を見ると、ドキッとする。
 どんな性格であれ、陽太くんがいるというだけで胸の奥が騒がしくなるのを止められない。

 微笑んでいる表情を見ると、きゅんとして痛くなる。
 そして、微笑みを向けられている女性社員にヤキモチに似た想いを抱いた。

 やっぱり陽太くんへの気持ちはそう簡単に消えてくれるものではないらしい。


 だけど、今の彼と私は、社長と社員。
 公私のけじめをちゃんとつけるために、きっと彼は一線を引いたのかもしれないけれど……。


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