君を愛していいのは俺だけ

『俺と一緒の部屋がいいなら、ダブルで予約しておいて』
「えぇっ!?」

 目を丸くしている私を、正面に座っている滝澤さんが一瞥したから、慌てて手元のメモに視線を落とす。


『冗談に決まってるだろ。ダブルで予約なんてされた日には、なにが起きるか分からないからね』
「あの、それって……」
『秋吉さんがまた酔って、俺に抱きついてきたりするかもしれないってこと。部屋は禁煙にしてもらえる?』
「……かしこまりました」

 “また”って、どういうこと?
 まさか、この前の歓迎会で、隣にいた彼に抱きついてしまったの!?

 だとしたら、周防会の先輩方から目を付けられているのも納得がいく。
 滝澤さんが確信を得たように、私の気持ちを見透かすのも。

 それに、陽太くんの冷たい対応も分かるような……。


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