君を愛していいのは俺だけ

 佐久間さんと並んで二歩前を歩く彼は、グレーのスーツがよく似合っている。彼のスーツが“ジェミニ”という色だと話しているのが聞こえてきた。


「秋吉さん、周防社長の元カノって本当?」
「えっ!?」
「社内女子の一部で、そういう話になってるけど」
「ま、まさか!!」

 一体誰がそんなことを言いだしたの?

 もしかしたらこんなこともあるだろうと、陽太くんは社長と社員の一線を意識させるために、先に釘を刺したのかな……。


「違うならいいけど、社長の彼女になりたくて入社した子もいるくらいだから、気を付けたほうがいいわよ」
「教えてくださってありがとうございます」

 墨田さんが言ってくれなかったら、噂を助長するような言動を取っていたかもしれない。
 今日の出張だって、きっと社内ではよからぬ話になっているのかも……。


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